二人の父親

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 小学生の頃、伊藤さんには二人の父親がいたそうだ。
 一人は顔が紙のように白く、いつも伊藤さんのことを見てはニタニタ笑っていたという。
 また、もう一人は顔が血だらけで、いつも虚ろな顔をして、どことも知れぬ一点を見つめては、ブツブツと聞き取れない声で何かを呟いていたそうだ。
 この二人の父親は背格好も顔も非常によく似ていた。いや、全くの同一人物だったのだと伊藤さんは断言する。
 二人の父親はいつも一緒に行動していた。仲がいいというよりは、どちらも互いのことはそれほど気にしておらず、ただ一緒に行動するのがルールだからそうしている、というように、伊藤さんには見えたそうだ。
 この二人の父親は伊藤さんが中学校に入る同時に、姿を消してしまったという。
 なお、伊藤さんの父親は、彼女が小学校に入る前に交通事故で亡くなっている。
ホラー
公開:20/11/24 08:07
怪談 『刹那怪談』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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