赤い糸

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「好きな人がいると、赤い糸が互いの指に絡みつくんです」
 私はそう言いながら、互いの指に絡みついている赤く輝く糸を丁寧に外した。
 恋人と赤い糸で結ばれているという表現は、もう死語になっているのかも知れない。けれど、それは私にとっては事実なのだ。
 初めてこの体質を知ったのは中学生のころ。けれど、その事を知らせた同級生は、私と自分の間に絡みつく赤く輝く糸を見て、気持ちが悪いと逃げて行った。その途端に、糸は輝きを失った。好きな人との縁が断ち切られる時の苦痛を、私はあの時、初めて知ったのだ。
 それ以来、人を好きにならないように生きて来た。けれど、この会社に入って、目の前にいる同僚が好きになってしまった。
 彼は赤い糸を見ても、顔色を変えたりはせず、優しく私の手を握ってくれた。
 拒絶されていない。縁はまだ続いている。
 そう思えるだけで、なぜかホッとした。
ファンタジー
公開:20/11/24 06:45
マジックリアリズム 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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