最凶のふたり

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「まずいよなあ」
気がついたら口から言葉が出ていた。いつもの癖だ。
「なんだい兄貴、またなにか困り事かい」
「いやなに、大したことじゃないんだ」
彼はその洞窟のミニチュアみたいな形をした二つの鼻の穴から勢いよく空気を吹き出して首を振った。
「兄貴、俺に隠し事はなしだぜ」
まったく感がいいのだ。
「ああ、わかってるよ。実は今、テスト環境をいじっているつもりで、本番データを書き換えてしまったんだ」
彼はぱかりと口を開いた。
「それはまた、えらく不味い事態じゃないか」
「みたいだ」
「その様子からだと、バックアップも取ってはいなかったんだろう」
「御名答、切れるね」
ゴリラはウホウホ言いながら部屋の中をぐるぐると移動し始めた。彼の癖なのだ。

どんな理由であれ、僕を攻め立てるものは彼の餌食になる。前職の社長は全治三ヶ月の重症で、今も入院中だ。

夜逃げでもするか。
腕を組んで、僕はひとりごちた。
その他
公開:20/11/24 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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