交差点。ふたり、

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いつものように近所の交差点に立ち、車や人が流れて行くのをぼんやりと眺めていると妻が迎えに来てくれた。
夕暮れの町をふたり並んで歩く。
途中の花屋で妻が秋菊の束をひとつ買う。他にも可愛い花があったのに、と言うと、秋ですからね、これが良いんです、と小声で笑う。
家に帰ると晩ご飯の用意が出来ていた。
僕はなんだかお腹がいっぱいな気がして食事をする妻を黙って見ていた。
昔から食は細かったが、近頃はますます痩せてきたように思う。もう少し食べれば良いのに。
ふと、背後の小さな仏壇に目をやると買ってきたばかりの菊の花が飾られていた。そうだな、やっぱり菊もいいな、などと考え眺める。写真立ての中で亡くなった母が微笑んでいる。
その横にもうひとつ、伏せられた写真立てがあるのに気がついた。
あれは、と尋ねると、気にしなくていいのよ、と妻が答える。
そんな毎日を繰り返している。
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公開:20/11/24 11:21

たそがれる猫の城

主にTwitterで140字小説やマイクロノベル等、短いお話をのんびりと書いています。

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