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鬼ヶ島、そこは宛ら楽園のようだった。
色とりどりの花が植えられた花壇、規則正しく整えられた噴水のある池。その周りには仲睦まじく遊ぶ親子や談笑する娘達の姿があった。

一行は困惑した。
思い出してみれば、村の暮らしは陰鬱なものだった。
村人は、口を開けば愚痴、悪口、不平不満を吐き出し、収穫量の減少、天候不順、人口減少すらもすべて鬼のせいにした。他人の家庭事情はこれ以上ない酒の肴だった。やれどこの息子のできが良いだの悪いだの、やれどこの亭主が不倫しているだの、居酒屋ではそんな話が溢れた。また、一度攻撃の対象になるととことん攻撃された。桃太郎の家には「人さらい」「妖怪太郎」と書かれた紙が連日貼られた。
桃太郎はそんな生活を変えるため鬼退治を志したのだった。

ふと、親子がこちらに気付いた。

「キャー、鬼よー」
「助けてー、殺されるー」

桃太郎は自分の角を撫でた。
そうか、鬼というのは…。
その他
公開:20/11/24 10:15

おおつき太郎

面白い文章が書けるように練習しています。
日々の生活の中で考えたこと、思いついたことを題材にしてあれこれ書いています。


Twitterはじめました。
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