赤絨毯

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 昨年まで鉄道会社で働いていた阿久津さんは、線路の上に赤絨毯が延々とどこまでも敷かれている光景を、勤務中によく見たそうだ。
 線路に赤絨毯が敷かれていたら、普通、電車は走れない。だが、この赤絨毯は電車の車輪には何の影響も及ぼすことはなく、普通に運行できていたそうだ。
 ただ、この赤絨毯が敷かれた日には、その路線のどこかで必ず、人身事故が起きたという。それは、自分が運転をしている電車の場合もあれば、自分が運転している電車から遠く離れた場所で起きる場合もあった。
 阿久津さんは若い頃からそれを見ており、決していい気持ちはしなかったが、これも仕事と割り切って、ずっと無視をし続けていた。
 ところが、昨年に定年退職となり、職場を退いた途端、例の赤絨毯は全く見えなくなったそうだ。
 何だか、長年の呪いから解放された気がしたと、阿久津さんは最後に語っていた。
ホラー
公開:20/11/24 08:19
怪談 『刹那怪談』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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