買い物に来た紳士

とあるスーパーに一人の紳士が訪れた。
店先に立つと、ジャケットを脱ぎ額に鉢巻を巻き腕まくりをして入店した。
「いらっしゃいませ！」
声を掛けてきた店員をじろりと見る。
「声が小さああい！！」
紳士が怒鳴ると、その声の音圧で陳列されていた果物と一緒に店員が吹っ飛び、失神した。
「な、何事ですか！？」
慌てて店長が駆けつけた。
彼と目が合うと店長のこめかみに汗が滴った。
「い、いらっしゃいまっせえええ！！！」
「声が小さあああい！！！」
「ぶはっ」
店長も吹っ飛び、失神した。
「警察を呼べっ」
残りの店員は急いで逃げ出し、通報した。
間もなくパトカーがやって来た。
警官二人が叫んだ。
「動くな！」
「動くなあああああ！！」
「声が小さああああい！！！」
「ぶほわあ！」
警官二人も失神した。
気がつくと店内にはもう誰もいない。
チッと舌打ちをすると、紳士はパトカーに乗り込んで次の店へと向かった。