寝食こぶ

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生物の構造や機能を模倣することで新しい技術を生み出す、バイオミミクリーを手掛ける研究機関が、ラクダのこぶを応用して画期的な商品を開発した。
砂漠にいるラクダが過酷な自然条件でも長いあいだ何も食べずに生きていけるのは、こぶの中に体に必要な栄養を脂肪にかえて溜め込んでいるためだ。
働き方改革の掛け声もむなしく寝食を忘れて多忙な日々を送るサラリーマンは、砂漠と似た劣悪な職場環境に耐えている。
そこで、件の研究機関は、ラクダのこぶを働くヒト用に改良して数日のあいだ何も食べなくて済むよう栄養を補給し、徹夜の残業などでも寝なくて済むよう眠気を溜め込める「寝食こぶ」を実用化した。
寝食こぶは、瞬く間にサラリーマンのあいだで大ヒット商品となった。だが、体中のどこにでも貼り付けられるこぶを破裂させてしまうと、眠気が周辺に漂い、そこに居合わせたヒトに睡魔が襲ってくるので、その取り扱いには慎重を期す必要がある。
SF
公開:20/11/23 07:02
更新:20/11/23 08:19
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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