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「吸血鬼に血を吸われてしまって、それでなんというか、ひどい貧血なんです」
「それが居眠りの理由かな」
彼は気まずそうに、こくり、と頷いた。
「他にもいるか、同じ理由で居眠りしたやつ」
私は務めて冷静にそう言いながら周りを見渡した。だが生徒たちは苦笑したり、にやにやすることもなく神妙な顔をして私の方を見ている。
「なあ、お前たち受験生なんだぞ。ちょっと自覚が足りないんじゃないか?」

その夜も残業で遅くなった私は人気のない夜道を一人で歩いていた。駅から住宅街へと続く入り組んだ道の途中に、老婆が体を丸めて座り込んでいた。
「大丈夫ですか?」
何か言おうとしているが聞き取れないので耳を寄せると、いきなり肩に噛みつかれた。
驚いて尻餅をつき、見上げると、口元から血を滴らせた若い女が私を見下ろしていた。

翌朝遅刻した私は、隈のできた目で生徒たちを見渡した。彼らはにやにやした笑顔でこちらを見ていた。
ファンタジー
公開:20/11/23 07:00
更新:20/11/23 06:56

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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