夕暮れ自動販売機

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妻の買い物が終わるのを待っていた俺はドリンクコーナーで見慣れない自販機を見つけた。夕暮れ自動販売機?何だこれ?思わず繁々と見つめてしまう。
「あの…まだでしたら先に宜しいですか?」
後ろにいた老夫婦に声をかけられ「すみません」と先を譲る。
老夫婦は金を入れると、続いて古びた写真を読み込ませた。
ガチャリ、と音がして自販機の扉が開く。老夫婦は中に入っていった。

30分後、老夫婦は幸せそうに手を繋ぎ出てきた。俺はその後ろ姿を見送る。
「お待たせ!どうしたの?」
買い物を終えた妻が呆然としている俺を不思議そうに見つめる。俺は老夫婦の話を妻にした。
「えっ!ここ、夕暮れ自販機あったんだ。写真持ってくればよかった~」
この自販機は写真の中の夕暮れを再現してくれるVR装置らしい。
残念そうにしている妻に俺は1枚の写真を取り出す。
妻は満面の笑みを浮かべると俺の手を取り、写真を自販機に読み込ませた。
公開:20/11/22 19:21

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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