再会

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私は唄う。 あなたへ届くようにー。




戦乱の世。
私は一国の主の娘として生まれ、乳母の息子と兄妹同然に育てられた。
彼は、私を護るため、幼少期から剣術を学び、鍛練していた。

「姫がご無事でなにより」

彼を失って初めて、私は彼への思慕に気づいた。
父上の制止も聞かず、衝動的に仏門に入り、生涯を捧げた。






「ありがとうございました!」

唄い終えて一礼すると、広場に集まった大勢のお客さん達から拍手と歓声が湧き起こった。

この瞬間は、何度経験しても胸が熱くなる。


路上ライブを始めた頃は、耳を傾けてくれる人が居なくて、心が折れそうになることが多々有った。
そのたび、いつか彼に届く日を夢見て、自分を奮い立たせてきた。





「やっと、お会いできました!」


広場に残った一人の男性が、歓喜の声を上げた。

優しく微笑む彼の額には、私を庇って斬られた傷痕が刻まれていた。
ファンタジー
公開:20/11/22 19:07
更新:20/11/22 19:54

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