全身スキャンデータ

「じゃあ、ここで」
空港で彼女と別れると十数時間、地球の裏側まで飛びつづけた。
彼女とスキャンショップに行ってそれぞれの全身スキャンデータを取ったのは昨日のこと。交換したデータメモリは胸ポケットにある。
今度の海外赴任は当分帰れそうにない。メモリは彼女との大切な接点だ。赴任先の部屋に着くと、PCにメモリを入れてプロジェクターをONに。部屋に彼女の立体像が投影される。
「やあ、さっき着いた」
「お疲れ様、元気？」
「うん、長いフライトだったけど」
日本では僕の３Ｄが彼女と話している。
「これから会社に。じゃあ、また」
通信３Ｄはまだ動きがカクカクするが全身スキャンデータがあれば音声通信だけで３Ｄが滑らか。それに通信しない時も彼女の投影３Ｄを楽しめる。無言の彼女にはすぐ慣れるさ。

翌日、３Ｄミニを注文した。20分の１の彼女の３Ｄモデル。これでいつも彼女と一緒だ。胸ポケットに入れておこう。