おじいちゃんちの階段

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 子どもの頃、祖父の家の階段でよく遊んでいた。急斜面でぎしぎしと音が鳴るのがお気に入りだった。その日も私は階段の上に座っていたが、あっと思った瞬間、階段の上から下に一気に転げ落ちた。凄まじい音のあと、すぐに母親と祖父が駆けつけた。心配して私の身体を抱きかかえる母親と祖父、目を閉じたままの私。この光景を私はなぜか階段の上から俯瞰して見ていた。そこで私の記憶は途切れている。
「昔おじいちゃんの家で、あんた階段からおちたんだよ?」
 祖父の葬儀がおわった日、母親が言った。祖父が保管していたアルバムに、私が階段の上でピースをしている写真があった。祖父が亡くなり持ち主がいなくなったあの家は、建物の老朽化も進んでいたため取り壊されることになった。祖父の骨を拾っていた頃にはすでに泣き疲れて涙が枯れていたのに、またボタボタと涙が落ちた。祖父もあの階段も思い出とともに逝くのだと思った。
その他
公開:20/11/20 11:24

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