世のため人のため

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昨年、男は長年勤めた会社を定年退職した。
大手企業の部長として、生活のすべてを会社に捧げた。大勢の部下を従え、難しいプロジェクトをいくつも成功させた。どれも自分でなくては成功はあり得なかった仕事だ。人脈も豊富で、他人に自慢できることは多かった。
退職した今、自分の培った能力を世の中に活かしたい。
男は意気込んでいた。

しかし、改めて世の中を見渡すと、男には許せないことが多かった。

「この店のサービスはなってない」
「誰の税金で食わせてもらっているんだ」
「まったく政治家はなにやってるんだ」
「俺を誰だと思っている」
「俺のたばこの銘柄くらい覚えておけ」

目につく常識外れを徹底的に指摘し、だらしない大人達を教育した。
男がまちを歩くと人々は羨望のまなざしを向けた。
気持ちよかった。

「ねえ、あの人そうじゃない」
「本当だ。近所じゃ有名よ」
「絶対に関わっちゃだめ」
その他
公開:20/11/20 06:48

おおつき太郎

面白い文章が書けるように練習しています。
日々の生活の中で考えたこと、思いついたことを題材にしてあれこれ書いています。


Twitterはじめました。
https://twitter.com/otaro_twi
 

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