白昼エレベータ

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息をはあはあさせながら、ビルに駆け込んだ。よかった。1機しかないエレベータが1階にいる。混んではいたが、乗り込ませてもらう。そっとハンカチを出して、呼吸を落ち着かせる。ぎりぎり間に合いそうだ。ふう。
汗がひくにつれて、違和感。振動がない?
エレベータが止まっている。階数ボタンを見ると、どのボタンも点いていない。そんなバカな。
同乗の人々をよけながら、手を伸ばし、7階を押す。ようやくエレベータのドアが閉まった。

静かに圧が高まり、押し寄せてくる。機体の上昇の、じゃない。周囲からふつふつ湧き上がるような無言の圧。
押してはいけなかったのか。でもエレベータは上がるためじゃ?いや、押してしまったものはしかたない。
身体と頭を別の種類の似た動揺が襲う。
チン。
7階に着いた。ふらふらと降りる。風に吹かれて眩暈がおさまる。何だったんだろう、今の。
振り返ると、エレベータは静かに下降していた。
その他
公開:20/11/20 22:00
#現実の中の異界 #125

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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