301. ユカリカリ

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「あー、間違えちゃった!」
妻がキッチンで落ち込んでいる。
「エサ、また間違えたの?」
「柔らかいのを買ってくるつもりが、カリカリを買ってきちゃったわ」
飼い猫のミオは十三才。高齢になってきたので半年ほど前からエサは柔らかいものに変更したのだが、しょっちゅう妻が買い間違えてくる。
「仕方がないなぁ…」
俺は妻からそれを受けとると、仏壇へと供える。
「ユカリ。好物のカリカリだ。存分にお食べ」
七歳で亡くなったユカリの遺影へそう話しかけると、いつもユカリはにっと笑う。

翌朝妻はそのカリカリを、ぬるま湯と混ぜ柔らかくしてミオに与える。
ミオはミオで、温かく好みの柔らかさで食べられるので満足そうに咀嚼している。

「やっぱりユカリはまだ私たちと一緒に居るのかな…」
妻がユカリの遺骨の入ったキーホルダーを愛おしそうに撫でると、

ミオはユカリとソックリな声でみゃあうと鳴いた──。
ファンタジー
公開:20/11/18 12:44
更新:21/04/09 02:49

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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