勇者の証

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「僕が勇者ですって?」
 村の長老は僕の手を指さした。「その右手が何よりの証」僕は呆然と右手の六芒星の痣を見つめた。失われた記憶を求めて旅を続けてきたが、まさか僕が勇者だなんて。
「これを抜いてみなさい」長老は古い剣を差し出した。 
 抜くと切っ先から鍔元まで鈍い光が走った。その光を見た瞬間急に体が何者かに操られたように動き出し、気が付けば長老に切りかかっていた。長老はすんでのところで持っていた杖で防いだ。
「うむ。その闘気、見事じゃ」
 戸惑う僕は痣を見つめた。すると心は落ち着き、なぜか不思議な力が沸き上がってきた。
「ここより北にある迷いの森が、モンスターの巣窟になっておる。ぜひ勇者殿に静めていただきたい」
「はい!」僕は剣を持ち、勢いよく飛び出した。
 まもなく長老の変装を解いた勇者が安堵のため息をついた。
「記憶喪失の魔王がこのまま正義の使徒になってくれればいいのですが」
ファンタジー
公開:20/11/18 10:00
更新:20/11/20 14:54

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