イン・ザ・スティール・ボックス

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地下の満員電車。
パンデミック前に比べると、その密度はやや低くはありつつも、ほとんどもとの日常が戻ってきているように思える。
変わったのは、誰もがマスクを付けた風景と、わずかに咳の音が聞こえるだけで死肉に群がるハイエナよろしく、いっせいに意識が集まる、そういうところ。

カーブに差し掛かると、車両が大きく傾く。
「この先、電車が揺れます」
遅れてやってくるアナウンス。
スマホに集中していた誰かがよろけて他の誰かにぶつかる。すみませんと言うのは謝っているのではなくただの社交辞令だ。

電車はいつも同じレールの上を進んでいく。ドアが開くたび誰かが出ていき、また違う誰かが乗り込んでくる。

密閉、密集、密接。

サラリーマン風の男が、吊手を握りしめてうなだれている。
ワイヤレスイヤホンで音楽を聞きながら、高速タップで携帯を操る若い女。

開放、空疎、孤立。

Unhappy?
No. But……
その他
公開:20/11/18 07:00
更新:20/11/18 07:21

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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