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 彼はギタリストであり、バンドのヴォーカルだった。私たちは高校の頃の同級生だった。同窓会で再会したクラスメイトにスマホで彼の動画を見せられ、衝撃を受けた。冴え渡るギターの音。高音も歌いこなす激しくも繊細なその歌声。当時は知らなかったが、高校の頃にすでにバンドを結成していたらしい。
「歌、上手いんだね」
 そう声をかけると、彼は嬉しそうに笑った。その笑顔は動画よりも私の胸を震わせた。
 私は彼のバンドのライブに欠かさず行くようになり、気づくと連絡を取り合う仲になっていた。
「俺、メジャーデビュー決まった」
 ある雪の晩、彼は私にそう告げた。ハッとした。もうお別れなんだと、そう思った。
 彼は私の肩を抱き寄せると、額にキスをした。初めて嗅ぐ彼の匂いが心地よくて泣きそうになった。
「ばいばい」
 彼の歌う動画を見る度に涙が溢れる。この世界の中だけで、彼は永遠だ。
 彼の生きた軌跡は、ここにある。
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公開:20/11/19 16:00
更新:20/11/19 18:39
動画を見る度に あなたを思い出します wowakaさん どうか安らかに

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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