みどりの糸

　よく運命の赤い糸っていうけれど、本当はみどり色なんだよ。その糸は、神さまが飼ってる蚕から作られる。繭を、たくさんの縁がぐつぐつ煮込まれた鍋に入れると、あっという間に鮮やかなみどりの糸が完成するんだ。
　そうしてできた糸は、神さまの手によって、生まれてくる前のヒトに。つまりお母さんのお腹の中にいる赤ちゃんに刺繍される。
　おぎゃあと産声をあげた赤ちゃんの体を見てごらん。肌の奥に透けている、みどり色の線があるだろう。これが神さまからもらったみどりの糸。血が流れて生きている僕らの証。血管だよ。このみどりの糸が、僕らをさまざまな人に巡り合わせてくれる。
　だからね、漢字の「縁」と「緑」という字は似ているんだよ。