猫の嫁入り

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「ねぇ、ママ。パパと初めて会った時、どう思った?」
「桜が綺麗な日だったの…。」手際よく切った野菜を鍋に入れる。
「それから?」
「初めて会うのに初めてじゃない感じかな。」だし汁の湯気がふわっと舞う。「それとね、生まれ変わってもきっとまたパパと結婚するって思ったわ。」そう言いながら砂糖、酒、みりん、醤油を入れる。ママの目分量はまねできない黄金比。隠し味にはほんの少しのトマトケチャップ。
「ただいま。あ、この香り。ママの肉じゃがだ。」
「おかえり、パパ。」母との会話を思い出しながら料理をすると、不思議と母の味になる。

――ミャウ。

「通り雨に降られて、満開の桜の木の下で雨宿りしてたんだ。そしたらこいつがすり寄ってきて離れなくて。」

真っ赤な和柄のハンカチを巻かれ、頭には白い袋。

「この子、花嫁みたい。」
「ほんとだ!今夜は猫の嫁入りだ。」

母の四十九日、窓の外の朧月が滲んで見えた。
ファンタジー
公開:20/11/19 09:31

いけたかはしこ

右脳活動したくてショートショート書いてみようと挑戦中です!

空想競技2020入賞∶ 遠吠えリレー

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