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 蝉が歩道に転がっているのを見かけるとついつい警戒してしまいます。
果たして生きているのか、死んでいるのか。

 他の虫、例えば蝶が落ちていたら、私は死んだのだと考えます。カナブンならまだ生きていると考えます。しかし蝉だけはどうにもわからずついつい生死を気にしてしまいます。

 ところが先日、もう10月も末の早朝、駅の駐輪場に蝉が落ちているのを見かけました。
 
 これは明確な"死"でした。
 
 恐らく陸上で生きていた時間よりも長く、この駐輪場で死に続けていた蝉の死骸は見るからに乾いていて、羽も広がってしまっていました。強い強い"死"でした。

 私はこの時、自分がいつも蝉を見かけた際には"生"を感じていたことに気付きました。

 来年の夏、歩道に落ちたセミを最初に見かけた時、私は生死のどちらを感じるのでしょう。
その他
公開:20/11/17 00:51

ひばり

はじめまして。

自分がしたためていた文章がショートショートというジャンルにあたることをつい最近知りました。

いろんな人格が持ち寄った怖くない百物語のイメージで投稿できたらいいな。

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