りんごちゃんのほっぺ

りんご病に娘がなった。真っ赤なほっぺ。ぼんやりと眠そうな顔。そのうちつむじから葉っぱが出てきて、艶が出て、笑顔のかわいいりんごのお姫様のようになった。
「りんご姫ちゃん、お大事にね！」
近所の人や商店街の人達がちやほやするものだから。娘はすっかりそのつもりに。
「りんご姫はりんごジュースが好きなのよ。アップルパイもりんご飴も。それから、りんごのジャムで紅茶も頂くの。お月さまと仲良しで、夜になったら舞踏会に行くの」
そんなことを言っているうちに、薬が効いてきたのか眠ってしまった。つむじの葉っぱも落ちて、いつもの娘に戻った。
ゆっくり休んで元気におなり。そうしたらりんごでパイを拵えよう。たっぷりジャムを入れた甘いりんごティーで、お月さまと夜のお茶会。子どもの心はいつでも夢の中。その夢を欠かさず叶えてやる魔法使いでいるのは、昔お姫様だった私の、かねてからの夢だから。
記念に葉っぱは栞にしよう