夕暮れ自動販売機

母は教育熱心で俺は幼い頃から遊びというものとは無縁だった。だが、何も楽しみがなかったわけではない。
俺の塾の送り迎えをしてくれるのは必ず父だった。父は毎回帰り際、自販機で花火を買ってくれた。
俺は飛行機花火が大好きだった。ロケット花火に似た飛行機花火は夕暮れ空に飛行機雲の尾を作る。父と見上げる夕焼け空が俺の楽しみだった。
それがきっかけで俺は宇宙飛行士を目指すようになった。
俺と父は航空力学を学ぶ為と言って、ペットボトルロケットを夕暮れの空へと打ち上げる。
塾の迎えに来た父が「面白いペットボトルを見つけたんだ！」と教えてくれて、二人して自販機に向かう。
俺の青春は父と夕暮れの自販機にあった。そんな俺達を見て、ロケット仲間も沢山できた。
そんな俺に転機が訪れる。
『JAXAが１３年ぶりに宇宙飛行士を募集』
運命を感じた俺はすぐに申し込んだ。
夕暮れの自販機から始まった夢を俺は叶えてみせる。