冷たいミルク

0
1

ミルクは人の成長を映し出す。

生まれてまもない頃は母乳に哺乳瓶。

学校に通い始める。瓶や紙パックの牛乳が、昼の給食の定番になる。

そして育ち盛りは過ぎ、背丈の伸びが止まる。人は次第にミルクをミルクだけでは飲まなくなる。コーヒーや紅茶に、ほんの少し。

大人になる。毎朝のコーヒーはブラックになる。

歳とともに、そうやってミルクは縁遠くなる。少年時代、少女時代、日々の暮らしと切っても切り離せなかったのに。

やがて、折に触れて体力の衰えを感じるようになる。気力も。

そんな時、ふと、ミルクの存在を思い出せる人は幸運だ。

冷たいミルクをごくり。体の隅々まで行き届き、細胞に刺激が伝わる。

温かいミルクをゆっくり。体の隅々まで染みわたり、細胞を労る。

ミルクは人を元気にする。

時間の流れに抗うように。
その他
公開:20/11/17 18:29

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容