夫婦の会話

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「ねえ、普通の人が車に細工しようと思ったら、何ができる?」
朝食のテーブルで、突然妻が夫に尋ねた。
「車に細工?…ああ、また小説か」
夫は呆れたように笑った。趣味で小説を書いている妻は、よくこうして夫にネタを求めるのだ。
「そう。今度運転する人を殺したいんだけど、どうやったら事故とか起こせる?」
「どんな人が細工するの?」
妻は笑って自分を指差した。
「こういう人。私みたいに車の知識のない人が、頑張って調べて何とかできる範囲内で」
「そうだなあ…それなら事故より車両火災の方が確実かなあ…」
車に詳しい夫は、妻が理解できそうな方法をいくつか挙げた。

やがて仕事に出かけていく夫を見送った妻は、にっこりと微笑んだ。
―ありがとう、教えてくれて。
幸い車庫はシャッター式で、外からは中の様子が窺えない。夫には高額の生命保険もかけてある。
妻は長い髪をまとめ、軍手をはめると車庫の中へと姿を消した。
その他
公開:20/11/17 15:04
更新:20/11/17 15:16
ある日の秋田家の食卓 注:ウチのダイニングは こんなにお洒落じゃない笑 この話は一部フィクションです ←あたりまえか… #97

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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