人間嫌いの終末【改】

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「全ては既に終わっている。そう終わっていたのだ」

そう吐き捨てた組織の支配者は、止めに来たスパイの手を振り切り、細菌兵器のスイッチを押した。途端に滅菌処理された男のいる部屋以外の人間が、一瞬で菌に侵され倒れて行った。空気を通して爆発的に感染が広がり、致死率100%の細菌兵器はみるみる内に人類の99.99%を死滅させた。

黙示の到来から数十年経ち、コツコツと杖をつく老人の姿があった。彼の唯一の家族は野菜と犬だけだ。彩り豊かなハウスの脇に立つ小屋で静かに余生を送っている。

ワンワン…愛犬をなでながら彼は言った。
「未だに分からない事がある。人はどうして、自分が神に愛されているなどと世迷言を吐く気が起きたのか?」

不意に天使が語りかける。
「あなたは神に愛されていますよ」

だが、それを男は遮った。
「私は孤独が好きだ。たとえ神であったとしても一人にして欲しい!」

夜風が強く吹き荒ぶ。
SF
公開:20/11/15 00:48
更新:21/02/27 20:21

水鏡かけら( 日本 )

執筆のリハビリがてらに、書いております。
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