魔法のドレッシング

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まさに「魔法」としか言いようの無いドレッシングであった。どんなものでも、それをかけると、たちまち至高の料理になってしまうのだ。
サラダはもちろん、スープ、肉、魚、ライス、ジェラートに至るまで、効果は覿面だった。ランチョンマットにこぼしてしまった時は、いつの間にかランチョンマットが店から消えていた。

このドレッシングのおかげで、店は大繁盛だった。毎日、客の行列が途切れなかった。
「ハンバーグ定食ふたつー!」
「あいよー!」
普通のハンバーグを焼き、普通の皿に盛る。後はこの魔法のドレッシングをかければ完成だ。
「あっ」
ドレッシングのふたが外れていた。閉め方が甘かったのだ。体がドレッシングまみれになっていた。
新品のドレッシングに手を伸ばそうとした。不意に、視線を感じた。
店中の客と従業員がこちらを見ていた。
全員が、飢えた狼のような眼をしていた。
ホラー
公開:20/11/14 15:05

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