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彼らを直接見たのは初めてだ。
紫色の肌、緑の目、金色の舌と唇、赤い髪。
「ドクビトです」
柳に言われてつばを飲み込む。
「彼らに悪気があるわけじゃないのよ」
「ライオンにも、殺人ウイルスにも同じことが言えますね」
金害。彼らの吐く息はそう呼ばれる。突然変異によって生まれた彼らは、ただ息をしているだけで『我々』の命を脅かす。
「生かされているだけマシでしょう。これ全部税金なんですよ」
「彼らにも普通に生きる権利があるわ」
「ドクビトに通常の人権は与えられていません。国際法にもそう定められている」
収容所の職員用通路を歩き過ぎながら、マジックミラー越しに彼らの生活を垣間見る。楽しそうに遊ぶ子どもたち。
彼らの未来を守るために、一刻も早く金害を無毒化する方法を見いださなくてはならない。

柳は気づいているのだろうか。明日、この薄いガラスの向こう側に、自分たちがいない保証などないということに。
SF
公開:20/11/16 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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