つぎはぎ

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戦争時代末期、致命傷を負った俺は野戦病院へと担ぎ込まれた。そこで俺は狂った医師の狂った手術を受けた。
俺の体は数多の仲間の死体から使える部位を寄せ集めて作ったつぎはぎだらけの物に作り替えられた。その姿はまさに怪物そのものだった…

戦争が終わり、俺は行き場をなくした。化物に帰る場所はない…
ふと、頭に仲間の声が響いた。『故郷に帰りたい』『家族に会いたい』悲痛な叫びにも似た声が全身から溢れ出す。
これは…仲間の記憶…そうか。この体はもう俺だけのものではない。俺は戦場となった場所で仲間の遺体を集め始めた。

それからはずっと旅を続けた。仲間の故郷に赴き、その最後を伝えた。遺品を、遺骨を返した。
これは生き残ってしまった俺にしか出来ない事だ。
遺族は俺を見て驚くも忌避しなかった。それだけでありがたい。俺は命尽きるまで旅を続けた。
俺の存在は歴史に残っていない。だが慰霊碑にはちゃんと刻まれている。
公開:20/11/15 19:46

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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