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熱海駅で伊東線に乗り換える。茅ヶ崎-辻堂間の接触事故の影響で、東海道線は東京ー熱海間で運転を見合わせ、急行に影響が出ている。だが普通電車は時刻表通り入線。折り返し伊豆高原行の、扉寄りのベンチシートに座る。下田に行きたい老人の小集団が、途中で乗り換えるか、降りて特急を待つか、いっそタクシーにするかと議論している。その向こうでは関西弁の老人男性が「熱海は都会のはずなのに、なぜこんなに待たされるのだ」と文句を言っている。
定刻どおり出発。海側の車窓から熱海の裏側と日本一好きなジョナサンを臨む。来宮を過ぎるとしばらく眺望はなく、伊豆多賀から網代へのカーブの軋みが、換気のために開いた窓から騒々しい。網代には僕が二番目に好きなジョナサンがある。そして山を抜ければ宇佐美だ。宇佐美には、僕の空想上の寂れたガソリンスタンドが、防波堤沿いの道路の向かい側に、今でもちゃんとある。
伊東まではあと少しだ。
定刻どおり出発。海側の車窓から熱海の裏側と日本一好きなジョナサンを臨む。来宮を過ぎるとしばらく眺望はなく、伊豆多賀から網代へのカーブの軋みが、換気のために開いた窓から騒々しい。網代には僕が二番目に好きなジョナサンがある。そして山を抜ければ宇佐美だ。宇佐美には、僕の空想上の寂れたガソリンスタンドが、防波堤沿いの道路の向かい側に、今でもちゃんとある。
伊東まではあと少しだ。
その他
公開:20/11/13 11:15
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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