お茶漬け博物館

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「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない。それと同様に、高度に発達したお茶漬けはエネルギーと区別がつかないのだ」
 お茶漬け博物館の中を闊歩しながら、博士は言った。
「米と茶が混ざることで生まれる茶漬エネルギーは、今や、ありとあらゆる人工物の原動力となっている。もはや、生活の中心はお茶漬けなのだ」
「……しかし、博士」
 歴史、作成方法、利便性……等々、茶漬エネルギーに関するあらゆる展示物を見回しながら、僕は質問した。
「エネルギーへの応用が始まってから、お茶漬けを食べることは禁止されました。僕はもう、お茶漬けの味を忘れて――」
「助手くん」
 博士に言葉を遮られる。
「仕方ないのだ。お茶漬けを食べ続ければ、いずれエネルギーが枯渇してしまう。我慢しなければならないよ」
「……そうですね」
 モヤモヤした感情は消えない。今日も、昼食はパンか麺だ。
 米が食べたい――この感情は贅沢だろうか。
SF
公開:20/11/12 23:27
更新:20/11/12 23:28
お茶漬け 「勝手に秋のお茶漬けデー」

ぢろ吉郎


11/4~11/13の期間、「勝手に秋のお茶漬けデー」と題しまして、お茶漬けの物語を投稿中!(ストーリーに繋がりはありません)
11/4:「御茶ノ漬駅へようこそ」
11/5:「茶漬湖の底へ」
11/6:「神々しきお茶漬け」
11/7:「お茶漬け勇者の箸と匙」
11/8:「茶漬中毒」
11/9:「米どころ、茶漬けの祟り」
11/10:「茶が先か、卵が先か」
11/11:「檻の中。お茶漬けと一人」
11/12:「お茶漬け博物館」
11/13:「明日のお茶漬け」
お茶漬け、完結。充実したお茶漬けデーになりました……!
Twitter、ゆった~りと更新予定です。
https://twitter.com/dirokichiro?s=09

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