明日のお茶漬け

　我が国にお茶漬け禁止令が発令されてから、早くも三年が経つ。
　あれから、お茶漬けは消えた。一般市場から、すべてのお茶漬けの素が回収された。隠れて食べようとする違反者は、問答無用で捕縛されてしまう。
　だが、我々お茶漬け愛好家は立ち上がった。
　お茶漬けを食べる自由を勝ち取るための、命と食欲を懸けた戦いだ。
　今日も監視を避け、妻と子供たちの目に気を付けながらお茶漬けを作る。ご飯と緑茶は温かいものを。海苔と塩と梅干しはバランス良く。
　香りと食感を楽しみながら、一気に掻き込む。
　舌の上で米が跳ね、緑茶が優しく染みる。……あぁ、やはりうまいなぁ。
　でも、自分で作るとどうしても塩辛くなってしまう。市販のお茶漬けが懐かしい。
　……いつか。
　いつかもう一度、誰かと笑い合いながらお茶漬けを食べられる日が来ますように。
　――コトン。
　明日のお茶漬けに思いを馳せながら、私は箸と茶碗を置いた。