シマウマをほどく

シマウマをほどくのは難しい。憧れの動物園に勤めて5年になるけど私はまだ助手の助手だ。
サバンナエリアチーフの草野さんが集まった子どもたちの前でシマウマをほどき始める。喉のあたりの黒い縞に指を這わすと魔法のようにするするとほどける。草野さんはいつも縞をひゅんっと一回鞭のようにしならせて宙に放つ。泉さんがすかさず残された体を支える。シマウマが驚かないよう撫でながら。絶妙のコンビネーション。
くるくるくるくる。踊るような足どりでほどく。この道35年の草野さんは初老といってもよいのに身のこなしは意外と若い。子どもたちは手を伸ばし漂う縞に触れようとする。その小さな指が縞に触れるとぱちぱちと火花が飛ぶ。火花が出るとすごくいい夢が見られるそうだ。どの子も真剣な顔で可愛い。
落ちた縞を私が拾い集め、泉さんがシマウマに編み込んでいく。シマウマはご褒美を食べる。ショータイムは終わった。子どもたちに夢を残して。