『私をくるむもの』 鎧武者

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今日、私はお家に代々伝わる鎧兜に身をくるまれ、戦に臨む。
元服して数年、かつて人間五十年と詠った武将がいたが、私はこの戦を乗り切りそれくらいまで生きられるだろうか。
伝え聞くに、私も皆と同じで生まれた直後は赤い血にまみれ、湯に浸けられ衣にくるまれた。
それから袴着で男として袴に身を包まれ、剣の修行で道着をまとった。
そして今、人を殺めて名をあげる野心や、世の人々の平穏を願う者たちの血に包まれた戦場へと臨む。
生きて帰れるだろうか。
いや、私は生きて帰らねばならぬ理由がある。
歴史ある家が、妻が、生まればかりの子が、育んでくれた故郷とその家族のような人々が私を温かくくるんでいるのだから。
死に臨むのではない。生を勝ち取るために。
私は怒号と血煙に包まれた戦場で、一太刀を振りおろした。
その他
公開:20/11/11 20:18

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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