仮面舞踏会

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その昔、仮面は人が自らを飾り、彩るためにあった。

勝負の舞踏会。勝負服と勝負仮面を身に纏って挑む。ダンスステップを刻みながら意中の彼や彼女に近づき、雰囲気が盛り上がったその時、そっと仮面を外す。

そんな、人の出会いを引き立て、演出するための仮面の役割は変わってしまった。

自分を隠す、ただそのためだけに人は仮面をする。

物理的に顔を覆うだけではない。何を考えているのか、相手に悟られないために。

煌びやか、華やかだった仮面は、能面のような、目出し帽のような、味も素っ気もない道具に成り下がった。目に見えない心の仮面はさらに厄介で無愛想だ。

仮面舞踏会、もはや遠き時代の眩しい光景なのか。いまという殺伐とした時代にはそぐわないのか。

小粋な遊び心が尊ばれた時代は、いつか果たして戻ってくるのだろうか。
その他
公開:20/11/11 18:13

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

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