木枯らし1号

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気象庁は冬の訪れを告げる「木枯らし1号」が吹いたと発表した。日本付近は、西高東低の冬型の気圧配置となり最大瞬間風速16mの西北西の風を観測した。
木枯らしが吹きつける寒い夜、おじさんが屋台を引っぱりながら、「いーし焼き芋、お芋、お芋。早く来ないと行っちゃうよー」と、言いながら遠ざかって行く。
一杯引っ掛けていた私は、木枯らしに吹かれる落ち葉の様によろめきながら、コートの襟を立て直し帰宅を急ぐ。木枯らしは街路に紙屑をも巻き上げ私に投げつける。
寒い冬が来るなー、とブルブルと震えながら、何でこんなに冷たい風が吹くのだと、文句を言いながら歩いていた。
月明かりに突如、素浪人らしき侍が現れすれ違いざまに「あっしには関わりのないことでござんす」言った。足元には長い楊枝のような物が落ちていた。
拾い上げ落とし物ですよと声を掛けると、また「あっしには関わりのないことでござんす」と言って風と共に去った。
ファンタジー
公開:20/11/11 12:32

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