穴
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都築吉男は朝早くに花壇の水やりに庭に出ると塀の壁に穴がぽっかりと空いていた。覗き込むとトンネルのように遠くに光が見えた。穴は大人が四つん這いで進むのに丁度のサイズだ。入ってみると妙な既視感がある。そうか、これは胎内の記憶なのだろう。向こう側に行けば生まれ変われる。
ふと、後ろに何かの気配を感じた。息づかいもわかる程、ぴったり後を付いてくる。追い立てられるように必死に四つん這いで逃げるが、何かがずるずると引きずるように近付いてくる恐怖に震えた。
入り口では見えた光が、何故か今は見えない。それでも穴の出口を目指して進むしかなかった。
やっとの思いで穴から這い出る都築の顔に沢山の光が当たる。
「都築吉男だな。家宅捜索令状だ」
捜査員達が庭にシートをかけている。都築が後ろを振り返ると妻が悲しそうに笑って消えた。
「すまなかった」
罪からは逃れられない。
土の中の妻はそう言っていた。
ふと、後ろに何かの気配を感じた。息づかいもわかる程、ぴったり後を付いてくる。追い立てられるように必死に四つん這いで逃げるが、何かがずるずると引きずるように近付いてくる恐怖に震えた。
入り口では見えた光が、何故か今は見えない。それでも穴の出口を目指して進むしかなかった。
やっとの思いで穴から這い出る都築の顔に沢山の光が当たる。
「都築吉男だな。家宅捜索令状だ」
捜査員達が庭にシートをかけている。都築が後ろを振り返ると妻が悲しそうに笑って消えた。
「すまなかった」
罪からは逃れられない。
土の中の妻はそう言っていた。
ミステリー・推理
公開:20/11/11 12:22
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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