8
6

 私は虹屋でございます。この春の国を巡り続けて数千年。私がこの棒を一振りすると大空に美しい虹が架かるのです。それを見た者は幸せになれるのであります。
 私は今回、王国の姫君の結婚に幸福を捧げるために虹を架けることになっておりました。
 が、しかし、私は今大変なピンチに陥っています。雷鳴と共に現れたドラゴンを目の前に立ち尽くしているのです。死を覚悟した瞬間、断末魔の悲鳴。目を開けると私の前に鎧を着た青年が剣を片手に立っていました。この国の騎士でしょうか。
「大事ないか」
「は、はい、ありがとうございます」

 翌日の市中パレードの始まりに私は空に得意の虹を架けました。辺りに歓声がわきあがります。姫君も婿殿も嬉しそうで何より。……ん?婿殿、あの青年ではないですか。イケメンで勇敢……。いやしてないですよ、嫉妬なんて。虹の端っこが少し曲がりそうになったので、新しくもう一本架けて二本虹に致しました。
ファンタジー
公開:20/11/12 11:32
更新:20/11/12 12:40

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容