ユカリウム

姉ちゃんと雑貨屋に来た。女子が来るような店で僕はちょっと嫌だった。
「これでハーバリウム作れますか？」僕があげた宝物だ。
「なら、ユカリウムがいいですね」
「ユカリウム？」
「ゆかりある方の品を入れるんです」

ユカリウムを作ることにした。
「姉ちゃん。これやる」弟が亡くなる前にくれた宝物。キーホルダー。コイン。ガチャポンの人形。匂いつきの花の消しゴム。ガラス瓶に入れ、シリコンオイルを流していく。すべてが踊るように浮き上がる。
ユカリウムが完成した。刹那、弟の声にハッと驚いて瞼を開くと、隣に弟がいた。
「姉ちゃん上手に出来たね」見上げるとユカリウムの空を見ていた。人形が踊り、コインが舞い、花の匂いが漂ってきた。透過光でステンドグラスのようだ。
「ハルト、きれいだね」
「姉ちゃん。僕はここにいるからな」

社会人になって夜遅く帰宅することが多くなった。
「ハルト、あのね」
「また、愚痴かよ」