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合コンが終わり、目をつけた女に目もくれられなかった俺は深夜タクシーの窓から心音を緩めた街の夜景をぼんやり眺めていた。
ふん、俺の本当の狩場はここさ。
マウンテンパーカーの内側からナイフを取り出す。細い通路に誘導して、人気がないのを改めて確認すると運転手の首元に凶器を突きつけた。
「止まれ」
突然アクセルが踏まれ、車体が急発進した。俺は勢い後ろへと反り返る。
こいつ、ふざけやがって。
間を置かずルーフの端から灰色の煙が噴出する。催涙ガス?
密室。ガスは瞬く間に充満する。撤退しようとドアに手をかけるが開かない。涙目で崩れる視界の中、ぼんやりと防護マスク姿の運転手が見える。このやろう、いつのまに。
運転席に飛びかかった瞬間凄まじい衝撃と熱が手の甲から全身に広がる。スタンガン……ッ!
息ができないなか、うめき声を上げて悶える。
「よく狩れるなあ、このあたりは」
意識を失う直前、そんな声が聞こえた。
ホラー
公開:20/11/14 07:00
更新:20/11/12 17:09

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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