檻の中。お茶漬けと一人

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 鉄格子の窓から差し込んでくる月明かりに、鉛色の器が照らし出された。
 ポツンと、茶碗。牢屋の冷たい床とは対照的に、ホカホカのお茶漬けが盛られている。
 囚人は、お茶漬け以外の食べ物を口にすることを禁止されていた。それが、彼らへの罰なのである――お茶漬けを冒涜した罪を、償わなければならない。
 一人の囚人が這うように移動して茶碗に近付いた。お茶漬けを睨むその目には、深い憎しみが宿る。
「……こんなの、お茶漬けじゃない」
 ターメリックライスがジャスミン茶に浸り、その上には数多のスパイス。味付けはコンソメ。
 この時代の、変わり果てたお茶漬けの姿。
 囚人の脳裏には、昔ながらのイメージがこびりついている。飯と茶。白と緑の揺らめき。渋味と塩味。
 もう、戻れないのか……お茶漬けはどこで間違えてしまったんだ。
 時代の波に流されて、囚人はお茶漬けを啜る。零れた涙は、お茶漬けの塩味を一層濃くした。
その他
公開:20/11/11 23:17
更新:20/11/11 23:18
お茶漬け 「勝手に秋のお茶漬けデー」

ぢろ吉郎


11/4~11/13の期間、「勝手に秋のお茶漬けデー」と題しまして、お茶漬けの物語を投稿中!(ストーリーに繋がりはありません)
11/4:「御茶ノ漬駅へようこそ」
11/5:「茶漬湖の底へ」
11/6:「神々しきお茶漬け」
11/7:「お茶漬け勇者の箸と匙」
11/8:「茶漬中毒」
11/9:「米どころ、茶漬けの祟り」
11/10:「茶が先か、卵が先か」
11/11:「檻の中。お茶漬けと一人」
11/12:「お茶漬け博物館」
11/13:「明日のお茶漬け」
お茶漬け、完結。充実したお茶漬けデーになりました……!
Twitter、ゆった~りと更新予定です。
https://twitter.com/dirokichiro?s=09

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