煙草を呑む
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俺は母親が嫌いだった。思い出すのは夜更けに酒臭い息をはきながら、玄関でだらしなく寝そべっている姿さ。そんなときは姉貴が一生懸命引っ張って、俺も手伝えというのも嫌だった。髪についた煙草の臭いも。
いつだったか珍しく家に友達が来た。母親がたまたま休みでジュースを出してくれた。そこで突然「手品を見せてあげようか」と言って煙草を取り出し呑み込んだ。あっと思うまもなく誰かの襟裏に手を伸ばすと、呑んだはずの煙草を取り出した。ウケたね。子どもはああいうの好きだろ。
それから友達が遊びに来るたびその手品を見せてた。誰かの親が俺の家なんかに来させられないって言い出すまで。
母親の葬儀のとき働いてた店のママが来てくれた。俺が手品の話をしたら「おかしいわね、あの子どうしてもうまくできないって言ってたのに」って。本当に呑んでたんだよ。右手にもう一本隠し持ってて。息子の友達が喜ぶからって。
嫌いだよ、そんな母親が。
いつだったか珍しく家に友達が来た。母親がたまたま休みでジュースを出してくれた。そこで突然「手品を見せてあげようか」と言って煙草を取り出し呑み込んだ。あっと思うまもなく誰かの襟裏に手を伸ばすと、呑んだはずの煙草を取り出した。ウケたね。子どもはああいうの好きだろ。
それから友達が遊びに来るたびその手品を見せてた。誰かの親が俺の家なんかに来させられないって言い出すまで。
母親の葬儀のとき働いてた店のママが来てくれた。俺が手品の話をしたら「おかしいわね、あの子どうしてもうまくできないって言ってたのに」って。本当に呑んでたんだよ。右手にもう一本隠し持ってて。息子の友達が喜ぶからって。
嫌いだよ、そんな母親が。
その他
公開:20/11/11 21:10
更新:20/11/12 20:13
更新:20/11/12 20:13
にがい話
豆腐タクシー
ボケ防止にショートショートを作ります
第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。
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