ランジュヴァンの双子

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私達はいつも一緒だった。
同じ日に生まれ、同じ時を過ごした。
星を見上げ、手を繋いで眠りについた夜。夢見たのも同じ場所だった。

その船に乗ることができるのは数人、そしてこの国から選ばれるのはただ一人きりだった。超光速の恒星間航行船「エーテリヲン」。その船員名簿に名を連ねたのは、私ではなく妹の香澄だった。

どうして?
そんな思いを抱かなかったとはとても言えない。悔しかった。でもそれ以上に誇らしかった。大好きな私の妹が、こうして世界中に祝福され、いま送り出されようとしている。

秒読みが始まる。
地表を離れ船が光速を超えれば、私達にはそれぞれ違う時間が流れ始める。生まれてからずっと同じリズムを刻んできた二つの心臓。もう二度と鼓動は重ならない。

ああ、そうだ。
悔しさよりも。誇らしさよりも。私は寂しかったんだ。香澄、あなたともう共に歩めないことが。

カウントゼロ。
二つの秒針が揺れた。
SF
公開:20/11/10 00:59
更新:20/11/10 01:02

エビハラ( 宮崎県 )

平成元年生まれ、最近はショートショートあまり書いていませんでした汗
ログインできてよかったぁ…

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