米どころ、茶漬けの祟り

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 妻と、新潟へ旅行に行ったときの話だ。
 夕食のお茶漬け、美味かったなぁ――なんて暢気なことを考えながら部屋で休んでいると、妙な倦怠感に襲われた。体が急激に重くなり、自由が利かない。
 頭をよぎるのは、噂に聞く「米の祟り」のこと。
 昔、この地域には、米を買い占めた大食漢がいたそうだ。それを見かねた豊穣の神様が、彼を大岩に変えてしまったらしい。以来、米を独り占めした者は祟られてしまう、という噂が語られているのだ。
 ……しまった。
 嫌な汗が噴き出す。
 食い意地を張って、妻が残した分のお茶漬けまで食べるべきではなかった。僕も、岩にされてしまうのかもしれない……最後の晩餐がお茶漬けになるとは、思いもしなかった。
 せめて妻に、妻に最後の言葉を……。
「ユウコ、僕はもう駄目みたいだ。体が動かない……」
「いや、ただの食べ過ぎでしょ。胃腸薬飲みなさい」
 ……米どころのお茶漬け、恐ろしや。
その他
公開:20/11/09 23:06
更新:20/11/09 23:07
お茶漬け 「勝手に秋のお茶漬けデー」

ぢろ吉郎


11/4~11/13の期間、「勝手に秋のお茶漬けデー」と題しまして、お茶漬けの物語を投稿中!(ストーリーに繋がりはありません)
11/4:「御茶ノ漬駅へようこそ」
11/5:「茶漬湖の底へ」
11/6:「神々しきお茶漬け」
11/7:「お茶漬け勇者の箸と匙」
11/8:「茶漬中毒」
11/9:「米どころ、茶漬けの祟り」
11/10:「茶が先か、卵が先か」
11/11:「檻の中。お茶漬けと一人」
11/12:「お茶漬け博物館」
11/13:「明日のお茶漬け」
お茶漬け、完結。充実したお茶漬けデーになりました……!
Twitter、ゆった~りと更新予定です。
https://twitter.com/dirokichiro?s=09

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