待ち人の吸血鬼

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長い間待ち人をしている彼。最も人ではないのだが。
待ち人のいる町の紅葉はより赤い色素が強い。黄昏で今は空も赤い。
「お兄さん、何しているの?」
「人を待っている」
「どんな人なの」
「小さい女性だ。いつもこの公園で2人で遊んでいた。砂の城を作ってな。ドラキュラの城ごっこをしていた」
そうは言っても彼は200歳を優に超えている。吸血鬼は長年に亘り生きると言われる。
試しに血を吸ってみてよ、と彼女は言った。そう言われて彼女の喉仏に噛みつきたい衝動に駆られた。
駄目だ、思ってもそれは美味しそうな漿果に見えるそれに、彼はーー。
「もしかして、わたしじゃない?いつもしてるよ」
「お前じゃない」
待ち人は少女の血を吸い尽くしてしまった。干からびた少女が砂に還った。
ホラー
公開:20/11/09 20:32
更新:21/01/08 19:19

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