茶が先か、卵が先か

17
12

 朝のキッチンは、光で溢れている。
 照らし出されるのは、急須と卵。この選択肢から、一日は始まる。
 朝ごはんは、お茶漬けか卵かけご飯に限るのだ。一人暮らしをするようになってから、いつの間にか、この二択で悩むことが楽しくなってしまった。上京祝いで両親から高価な炊飯器をプレゼントされて以来、ご飯が美味しくて美味しくて堪らない。
 ……よし、今日はお茶漬けで決定だ。醤油が切れているので、卵はパス。仕事終わりに必ず買ってこよう。
 あぁ、楽しい!この二択があるだけで、希望を感じる!どんなに暗い気分も吹き飛ぶ!卵とお茶とご飯があれば、僕の朝は希望で満ちているのだ!
 そろそろご飯を盛るとしよう。しゃもじを手に――いざ!
 気合を入れて炊飯器の蓋を開けた――、のだが。
 そこで待ち受けていたのは、硬い米と冷たい水だった。……どうやら、炊飯ボタンを押し忘れていたようだ。
 絶望が、僕を襲った。
その他
公開:20/11/10 22:36

ぢろ吉郎


11/4~11/13の期間、「勝手に秋のお茶漬けデー」と題しまして、お茶漬けの物語を投稿中!(ストーリーに繋がりはありません)
11/4:「御茶ノ漬駅へようこそ」
11/5:「茶漬湖の底へ」
11/6:「神々しきお茶漬け」
11/7:「お茶漬け勇者の箸と匙」
11/8:「茶漬中毒」
11/9:「米どころ、茶漬けの祟り」
11/10:「茶が先か、卵が先か」
11/11:「檻の中。お茶漬けと一人」
11/12:「お茶漬け博物館」
11/13:「明日のお茶漬け」
お茶漬け、完結。充実したお茶漬けデーになりました……!
Twitter、ゆった~りと更新予定です。
https://twitter.com/dirokichiro?s=09

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容