ワードプロセッサー

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自宅では集中できないからと行きつけの喫茶店で卒業論文を書こうとしたが…ダメだ。書きたい事がまるでまとまらない。
そもそも教授もこの本の作者も何が言いたいのかさっぱり分からない。人にものを教えるんならもっと簡潔に説明しろ!
「荒れてるね」マスターが珈琲を差し出した。「卒業論文?」
頷く私にマスターはキッチンからミキサーを持ち出した。
「これはワードプロセッサーと言ってね、書かれている言葉を噛み砕く為の調理道具なんだ」
マスターはノートのコピーと本をワードプロセッサーに入れる。回転する刃が紙を切り刻む。
「さ、飲んでごらん」
灰色の見るからに不味そうなそれを私は一気に飲み干した。
クソマズい!が…あれ?凄い!全部理解できている!これなら書ける!
ワードプロセッサーか…私も欲しいなぁ…
「これ、飲み干せる?」
マスターが広辞苑より分厚いワードプロセッサーの説明書を積み上げた。
やっぱりいいです…
公開:20/11/10 19:16

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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