(Heart) surgery

2
5

目の細かい磨りガラスを通したように、視界に映るものの像はすべてぼんやりと滲んでいる。光が溢れている。
「まずいね、相当弱ってる」
誰かがそんなことを言う。
「ひどいな」
別の男の声。
「とにかくユコウしないと」
何かが私の体に接触する。僅かに痛みを感じる。
体の中に何かが入り込んでくる。段々と、気分が和らいでいくのがわかる。母の腕に包まれているような、幸福な安心感。誰かの記憶……?
「よし、つぎはこいつを剥ぎ取るぞ」
「ジンカクセンがすぐ近くを走ってますね」
「気をつけろよ、傷がついたら、二度と自分を取り戻せなくなる」
四つの腕が忙しなく視界を行き来する。何かがゆっくりと取り払われていく感覚がある。黒々した、重たくて汚い、私を捉えていた何かが消えていく。

意識が途絶えてどれくらい経ったのだろう、私はベッドの上で目を覚ました。
胸に手を当てる。私は久々に、自分の気持ちをはっきりと感じた。
ファンタジー
公開:20/11/13 07:00
更新:20/11/12 06:50

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容