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兄ちゃんが僕を嫌いな事を、僕は前から知ってたと思う。
あれは家族でキャンプに行った夏。帰り際の夕暮れ、一人で泳ぐ兄ちゃんを見た。
川の水は冷たくて、風も強くて波も立って、腰まで浸かった兄ちゃんは寒そうだった。
「兄ちゃん、もう帰……」
遊んでると思った兄ちゃんは服を着たまま、振り返った顔が引きつってた。
「来んな、あっち行け!」
とっさに後ろへ回した手に、びしょ濡れのラジコンヘリ。
誕生日にもらったばかりの。前の日、遊んでる最中に失くした。突風で崖から落ちたって、お父さん達には言った。
本当は朝起きたら無かった。でも黙ってるつもりだった。誕生日のプレゼントは、毎年僕の分しか用意されなかった。
「……兄ちゃん、それ」
隠そうとした指が滑って、ヘリが流れた。流れにのまれたヘリを追って、掴まえようと飛び込んで。
足がつかなくて、僕が先に沈んだ。
僕を抱えたせいで、泳げなかった兄ちゃんを道連れに。
あれは家族でキャンプに行った夏。帰り際の夕暮れ、一人で泳ぐ兄ちゃんを見た。
川の水は冷たくて、風も強くて波も立って、腰まで浸かった兄ちゃんは寒そうだった。
「兄ちゃん、もう帰……」
遊んでると思った兄ちゃんは服を着たまま、振り返った顔が引きつってた。
「来んな、あっち行け!」
とっさに後ろへ回した手に、びしょ濡れのラジコンヘリ。
誕生日にもらったばかりの。前の日、遊んでる最中に失くした。突風で崖から落ちたって、お父さん達には言った。
本当は朝起きたら無かった。でも黙ってるつもりだった。誕生日のプレゼントは、毎年僕の分しか用意されなかった。
「……兄ちゃん、それ」
隠そうとした指が滑って、ヘリが流れた。流れにのまれたヘリを追って、掴まえようと飛び込んで。
足がつかなくて、僕が先に沈んだ。
僕を抱えたせいで、泳げなかった兄ちゃんを道連れに。
ファンタジー
公開:20/11/09 14:01
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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